掲載日:2007年1月6日

市民協働の実践へ熱意あふれる報告
〜現場からの議論で行政のあるべき姿を示す

大阪市職市政改革推進委員会
ワーキングチーム課題別集会報告
熱意あふれる会場風景熱意あふれる報告と議論は予定時間を越えて行われた。
 

大阪市職は2006年12月17日、「市職市政改革推進委員会ワーキングチーム課題別集会」を開き、ワーキングチーム(WT)のメンバーや各支部の政策担当者らが参加しました。4つのWT「自治システム」「セーフティネット」「環境」「まちづくり」は2006年8月に設置されました。

 このWTは、市当局のトップダウンで進められる市政改革に対し、現場からの議論で行政のあるべき姿を示し、市民協働の実践に向けた具体的なとりくみを提起することをめざして取り組みを進めてきました。この日の集会では、議論の現段階での到達点としての発表となりましたが、それぞれの発表は、住民とともにある市政づくりに向けた、熱意あふれるものでした。

「それで何をするのか?」に答えるために

課題別集会の意義

 大阪市職市政改革委員会の下に設置した4つのワーキングチーム(WT)による課題別集会は、円卓形式による各チーム・各メンバーの発表と相互討論を各支部政策担当役員が見守るという形式をとりました。4時間半に及ぶ長時間の集会にもかかわらず緊張感が持続したのは、ひとえにメンバーひとりひとりの集会成功への思いの強さによるものです。この集会の意義は、支部も役職も年齢も異なる多様な組合員が横に連携し、自らの言葉で政策議論を行ったことにあると考えています。

WTがめざしたもの

 WTは「市政改革に向けた提言(案)」の豊富化に向けての作業を担うべく設置されました。豊富化といっても提言案に加筆修正を加えることを任務としているのではありません。提言の実現に向けて、具体的な運動課題と方法を明らかにすること、つまり「それで何をするのか?」との問いへの回答を用意することにありました。

到達点と今後の課題

 WT設置からわずか4カ月という短期間で、大きな成果を残しえました。メンバーの熱心な取り組みとアドバイザーの先生方の親身なご指導の賜物です。しかし、分析作業やレポート作成、企画立案の過程でメンバー各自が問題意識を整理して発表し、また他のメンバーの思いを聞くところまでは達成しましたが、それらをすり合わせひとつのチームとしての提言にまとめ上げるところまでには至っていません。さらに4つのチーム間の討議と共通課題の析出も必要です。これらの作業のため、今しばらくの活動期間の延長をお願いします。

見え始めたこと

 しかし、この間の作業を通じて、確実に見え始めたことがあります。それは、市民参画・市民協働のまちづくりの実現には、区役所への大胆な権限移譲が不可欠ですが、現状では市民協働の実践経験が決定的に不足しており、そのノウハウを早急に蓄積する必要があるということです。協働実践は制度改革に先んじて労働組合として取り組みうる課題です。NPOなど問題意識の鮮明なアソシエーション型市民との協働と、高齢化や後継者不足により機能の衰退が課題となっている地域コミュニティー型市民との協働のそれぞれに対するアプローチのあり方の提起が求められています。NPOの地位向上と地域コミュニティー再生がキーワードといえるのではないでしょうか。

もうひとつの発見

 今回のWTの経験でのもうひとつの発見は、職場職域の異なる組合員が支部を越えて横につながり語り合うことが組合員のエンパワメントに結実するということです。力量豊かなアドバイザーの存在によって、それは可能となりました。ご指導に心からお礼申し上げます。(政策・運動推進局)

各ワーキングチームの報告

環境ワーキング

環境WTは、「大阪エコ・マップ」づくりを提案しました。地域の大切にしたい自然や町並みの写真を募集し、市職HP上で公開します。併せて、パソコンを使って大阪の環境改善を提案する「バーチャル版大阪の環境改善ビフォー・アフター」も募集します。大阪市のような大都市の環境改善の実現には、都市のグランドデザインを根本的に転換する提案が必要です。環境問題はマナーや道徳の次元の問題ではないからです。分別収集をはじめ市民的取り組みが要請される場合、それが本当に環境負荷を軽減し、環境改善に役立っているのか、市民には行政に説明を求める権利があります。市民がこの権利を正当に主張するためには、景観を含む都市環境は、ほかならぬ市民共有の財産であることが共通認識とならなければなりません。「着眼大局、着手小局」という言葉がありますが、今回の提言は、この市民的権利確立のための「着手小局」です。

まちづくりワーキング

8人のメンバーが各々の関心に応じて執筆したレポートは、「まちづくり」という漠然としたテーマにも関わらず、かなり一貫した問題意識が共有されています。現状認識として、(1) 行政主導、とりわけ中之島主導のまちづくりが限界にきていること。さらに今後の方向性として、(2) 市民参画・市民協働のまちづくりを実現するために、行政(あるいは労働組合も)が市民・地域と関係を構築すべき、というものです。

(1) について報告では、市民の意思をまちづくりに反映させるため、市民と身近な現場への権限移譲が必要とされ、それがとりわけ大阪市では区政改革の必要性となっていることが示されました。権限移譲と同時に現場の意識改革も必要とされることも指摘されました。(2) については、市民との対話の重要性が指摘され、職員が「コンサルタント」として地域に入る等の提案もありました。これら課題は労働組合に当てはまるものでもあります。市民・地域と市職との関係構築が不十分であったと自戒し、厳しい状況の今だからこそ、組合が地域に飛び出すべきとの声が多く、支部での実際の取り組みも紹介され、自治体労働運動の新しい方向性を提示する報告でした。

セーフティネット

 「セーフティネット」とは何か?医療、福祉、とりわけ生活保護をレポートのテーマに上げるメンバー。大阪市では増加の一途をたどる生活保護世帯数、市行政の重要な課題のひとつであることからすれば、当然といった雰囲気もありました。しかし、生活保護は最後の砦であり、そこにたどり着くまでに張りめぐらされている他法他施策のセーフティネットの網目が粗くなっているからこそ、生活保護の増加につながるのではないかといった議論が展開されました。課題別集会では、WTメンバーそれぞれが選択した「セーフティネット」についてレポートを提出し、発表しました。(1) 生活保護制度が抱える課題と改善に向けた提案や被保護者の自立に向けた提案、(2) 公立病院・公立福祉施設であるからこそ果たせる社会的使命、(3) 自治体公契約条例を制定することにより、不当に安い価格で落札する「ダンピング」を防止し、不当に安い賃金で働く労働者を生み出させないとりくみ、(4) 地域を再生し、子どもを守るセーフティネットをつくろうという提案、そして、その地域に行政がいかに関わっていくかという支部での具体的な取り組みに基づく提案、(5) 中小企業者の事業活動に関わる金融面でのセーフティネット、など、様々な角度からセーフティネットについて検討しました。WTはこの集会以降も引き続き議論し、その到達点を改めて示す機会をもつこととしています。

自治システム

 「自治システム」WTは、メンバーの所属支部の協力を得て、職場組合員に意見カードを書いてもらい、結果を集約・分析する作業を行いました。まず集めたカードを共通項や対立点をメンバー間で議論しつつグループ分けし、模造紙に貼り付けた現物を会場に展示し、メンバーが担当したグループの報告を行いました。

 実際に書かれた意見は、職場の不平・不満から市政改革に対する評価・提案まで多種多様にわたっています。メンバーの報告からは、職員の意識改革の必要性は皆が認めているものの、現場を理解しないまま進められている改革に対する不満が大きいようです。

会場には自治システムWTが集めた組合員の意見カードが掲示された。会場には自治システムWTが集めた組合員の意見カードが掲示された。

 また、「変わるまで変える。何を?」という意見カードに象徴されるように、改革の方向性がわからない、あるいは共有できていないが故の困惑もありそうです。市民サービスの確保や市民参加の促進についても関心の高さがうかがえます。

 また、具体的な提案ではメンバーに区役所支部の組合員が多いため、区役所の業務や区政改革についてのものが多く、区への権限移譲は求めつつ、日曜開庁、合区、区長権限等について様々な意見が出されました。

アドバイザーからの意見

『現場から論理を紡ぎ出す』

中川 幾郎(帝塚山大学教授・まちづくりワーキングチームアドバイザー)

 「まちづくり」とは、(1) ハードな都市基盤、(2) ルール、倫理、知識などソフトな「社会的共通資本」、(3) 地域の人的関係からなる「社会関係資本」の総体を指しています。このWTでは(2) (3) を中心に議論しました。

 テーマとしては奥深いのですが、達成度の高いレポートがそろい、私としても充実感を持っています。各レポートでは従来の行政主導のまちづくりが批判され、市民参画・市民協働のまちづくりが提案されています。

 そこで今後の具体的な検討課題ですが、まず都市内分権、すなわち本庁と区役所の制度設計、人事のあり方まで踏み込んで議論すべきです。また、市民参画・市民協働のためには、町内会・自治会など地域に密着したコミュニティー型市民組織と、課題別に結集するアソシエーション型のNPOなどをミックスしたアプローチが必要になります。

 3つ目は「安全・安心」。遠くない将来大地震が起こるのは確実なので、災害に強い安全なまちをつくることは当然ですし、安心して暮らせるまちづくりのためには警察依存の防犯ではなく、面識社会を地域で再構築する必要がある。これら課題について、労働組合側から市民に対して積極的に提案し、市民に溶け込んで実践していくべきでしょう。

 今後労働組合は「共益」団体だけでなく、市民と手を結ぶ政策提案団体であり、「公益」団体である面を強く打ち出してほしい。また、最前線の現場で格闘しながら、「論理」を紡ぎ出してほしい。そのことに心からのエールを送りたいと思います。

『横断的な論議で地域に』

澤井 勝(奈良女子大学名誉教授・セーフティネットおよび自治システムワーキングチームアドバイザー)

 このWTは4回会合を持ちましたが、都市におけるセーフティネットを再定義する出発点には立てたのかなと思います。まず大阪市には、生活保護制度をどう立て直すかという大問題があります。大阪市ができれば、全国で立て直せますから。

 メンバーからとても興味深い提案がありましたが、そんな重要な任務が現場にあるのです。一方、現場が事務処理に追われ疲弊しているという意見もありました。例えば「自立支援」という言葉が使われるようになりましたが、イメージをもっと豊かにしてほしい。旧来の制度だけでは難しい、しんどいことを、政令指定都市が持つ様々な権限を「使い倒し」て、可能にしてほしい。その際には、セーフティネットの基本理念を市民にどう伝え、協働していくかが課題になります。

 各WTで「まちに出る」という共通項がありました。市職で支部横断型の「まちづくり委員会」を区単位に設置してもいいのではないでしょうか。このWTでもやはり縦割り的な議論になっている面がありました。横断的な議論を深め、さらに地域と結び付ける。今日の報告を聞くと「ネタ」はたくさんありそうですね。

 WTのとりくみは2年程度かけるのかと最初思っていましたが、年内に成果を出すと聞き驚きました。それでも短期間でこれだけ形になった。しかし課題も多い。これを一歩として運動計画に戦略的に位置づけ、その上で市民に開かれたとりくみを進めてほしい。そのための組合員のパワーは十分あると感じました。

『市民とイメージの共有を』

槇村 久子(京都女子大学教授・環境ワーキングチームアドバイザー)

 私は「夢」を語るのが好きで、WTの会合でメンバーが面白い提案をすると、すぐに「やろ」「やろ」という感じで参加してきました。

 今日の提案で、道頓堀川を真っ青な水面に張り替えた画像がありましたが、単なる絵空事ではなく、大正生まれの私の母の時代には、土佐堀川で泳げたのだそうで、案外実現できる「夢」かもしれません。

 環境問題にしても、問題を解決した後にどんな姿になるのかイメージすることが大切です。循環型社会、地球温暖化、土壌汚染など、多岐にわたる分野で環境改善していくことは行政の重要な役割です。しかし行政だけでなく、市民の協力も必要なことは明らかです。

 市民は単なる顧客ではなく、責任を持って参加してもらわなければならないのです。しかし、その際には、市民が何を快適と思い、美しいと思うのか、どんな将来像を期待しているのかについて、互いに共有していなければなりません。そこで、市民・組合員に入りやすいところから、このWTでは写真募集をすることになりました。

 市内24区各10枚でも240枚集まります。それを市民にも広げ、身近なところから環境に気づき、互いに責任を持ってその改善にむけてとりくむきっかけになればと思います。皆さんもご協力お願いします。市職は巨大な組織で、職域も幅広く、WTをはじめとりくみの全体像を示すのは難しいでしょうが、最終的には大阪市、市内の各地域をどんなまちにするのか、市職ならではの方法論を提示してほしいと思います。

『まず自分が変わろう』

今瀬 政司(特定非営利活動法人市民活動情報センター代表理事・自治システムワーキングチームアドバイザー)

 1・2回目までのワーキングチーム会合では、目的もやり方も不明確で、積み上げの議論ができていなかったようでした。そこで、まず「自分たちのことを自分たちで調べる」という「作業」を提案しました。

 まず自分の職場を知ろうということで、組合員に市政改革や職場の現状について約300件の意見カードを書いてもらい、共通項や対立点などに基づきグルーピングしてもらいました。会場には生の意見も貼り出しました。作業にあたっては、地元に学ぶ「地元学」の考え方をベースにしました。自分たちの足元にある多様な意見や資源をありのままの姿で知る、という「作業」を自分たち自身でやってみたのです。

 市役所幹部が悪い、組合が悪い、市民が悪いなどと、他人を非難するだけでは何も変わらない。他人ではなく、まず自分は何をするべきなのかが大事です。私が伝えたかったのは、改革とは自己改革・自己否定ということです。あるべき論の以前に、多様な意見を知り合い、その違いを認め合うことから始めなければいけない。

 皆さんには、こうしたことの大事さを伝えたかったのです。現実にある多様な意見を自分の主義主張、好き嫌いを交えずに「客観的」に集約する。そこから論点を整理する。その上で独自に考察を加える。この経験を職場のみんなに伝え、さらに協働の「作業」を市民と共にすることになればいいと思います。「まず自分が変わる」という、改革の前提条件の大事さが共有できたらうれしいです。