更新日:2008年4月2日

団結権侵害の暴挙

自公、チェックオフ廃止強行可決
市労連、市長に再議決権の行使要請

 大阪市会本会議で3月28日、自由民主党・市民クラブ市会議員団がチェックオフ制度(給与から組合費を控除することができる)の廃止の議員提案を行い、即日採決を実施し、自・公の賛成多数により、強行可決しまた。

 廃止の動きが明らかになって以降、市労連は、市会での議員提案自体が労使自治への不当な介入であり、明らかな不当労働行為であることなど、到底許されるものではないとして、関係各機関に働きかけを強めてきました。

 提案が可決されたのを受けて市労連は、市会閉会後即刻、平松邦夫大阪市長に対して、「大阪市給与条例の『チェックオフ制度廃止』の議決の公布を行わず地方自治法第176条による市長の再議権行使を求める要請」を行うとともに、市労連見解を明らかにしました。

 見解では、チェックオフを一方的に禁止することは、「労働組合の組織運営と活動に多大な影響を及ぼすものであり、明らかに団結権の侵害」「労使自治への不当な介入」「日本も批准しているILO87号条約に違反」であると批判しています。市労連として、「市長への再議権の行使を求める」「関係団体に対する支援要請」「団結権侵害の損害賠償請求」など、組織の総力を挙げて取り組むとしています。

 今回の動きに対し、労働界をはじめ、弁護士、法曹界からも批判の声が上がっており、大阪市立大学の名誉教授で現在近畿大学法科大学院の西谷敏教授からは、

「チェックオフを廃止するための条例改正は、勤労者の団結権等を保障した憲法28条、結社の自由と団結権を保障し、国に対してその尊重を義務づけたILO87号条約に違反し、また地方公務員法(地公法)25条2項の趣旨に反するものである」

との見解が寄せられました。(見解全文

*市長の再議権とは
 地方自治法第百七十六条で「普通地方公共団体の議会における条例の制定若しくは改廃又は予算に関する議決について異議があるときは、当該普通地方公共団体の長は、この法律に特別の定があるものを除く外、その送付を受けた日から十日以内に理由を示してこれを再議に付することができる」と定められており、予算や条例などの議会の議決に異議がある場合、市長の再議権を認めています。再議された議決の成立には、出席議員の3分の2以上の同意が必要となります。

2008年3月31日
大阪市労働組合連合会
執行委員長 木下平和

不当労働行為であるチェックオフ禁止の条例可決についての市労連見解

 自由民主党・市民クラブ市会議員団は、3月28日、市会本会議においてチェックオフ制度(給与から組合費を控除することができる)の廃止の議員提案を行い、即日採決を実施し、賛成多数により、可決・成立させました。

 市労連は、市会での議員提案自体が民主主義の破壊であり、不当労働行為であること、ましてや議員提案として労使自治へ介入するものであり、到底許されるものではないと認識しています。市労連としては、議員提案を行った自由民主党・市民クラブ大阪市会議員団、並びに条例案に賛成した公明党市会議員団に対し断固抗議の意を表すものです。

 市労連は市会閉会後即刻、平松大阪市長に対して、「大阪市給与条例の『チェックオフ制度廃止』の議決の公布を行わず地方自治法第176条による市長の再議権行使を求める要請」を行いました。

 そもそも労働組合は、労働者がその労働条件改善のために自主的に結成し、加入する任意団体であり、労働者の団結権は憲法28条によって保障されています。チェックオフを一方的に禁止することは、労働組合の組織運営と活動に多大な影響を及ぼすものであり、明らかに団結権の侵害、すなわち憲法違反であります。

 また、使用者が労働組合との合意に基づいて行うことを条例で禁止することは、労働者保護のため制定された労働基準法の基本趣旨に真っ向から反するものであり、労使自治への不当な介入であります。

 さらに、ILO国際労働機関第87号条約の第11条では「労働者及び使用者が団結権を自由に行使することができることを確保するために、必要にしてかつ適当なすべての措置を約束する」としています。そしてILOの結社の自由委員会は、使用者によるチェックオフの便宜の撤回や法律による禁止は、労働組合に財政的困難をもたらす可能性があり、チェックオフの継続中に一方的に使用者がこれを中止することは、日本も批准しているILO87号条約に違反するとしています。

 当然のことですが、チェックオフ条例に基づいて組合費のチェックオフを行っている全国の自治体において、チェックオフ条例を当局・議会が禁止した前例はなく、全国的に重大な影響を及ぼすことは必至だといえます。

 さらに議員提案であるとはいえ、当該の大阪市職や市労連に対して、使用者である大阪市当局からは何らの情報提供もなされておらず、使用者としての見解も示されていないことは、極めて不誠実な対応であることを指摘せざるを得ません。

 過去、国政においては、2000年に自由民主党が、労働組合費のチェックオフを禁止するとともに、組合会計報告の一般公表を義務付けるなどとする労働基準法第24条改正案の国会上程を画策しました。

 しかしながら、労働団体・企業・法律家・政界を巻き込む議論が展開され、連合をはじめとする全国の労働組合、日本労働弁護団、経営者団体等多方面から「ILO条約違反」「団結権侵害」「労働基準法違反」「労使自治への介入」であることを表明・問題視する世論の反対を受け、結果的に成案に至らなかった経過があります。

 このような経過があるにもかかわらず、自由民主党・市民クラブ大阪市会議員団が同様の行動を引き起こしたことは、日本の民主主義を全面的に否定するものであり、真に労働者を冒涜する行為であると言わざるを得ません。
 従って市労連は、以下の闘いを強めることを表明します。

  1. 市労連は、憲法、並びに各法令さらにILO条約を無視する自由民主党・市民クラブの動きを決して許せるものではなく、平松市長に地方自治法第176条における再議権の行使を求めます。
  2. また、連合大阪・大阪公務労協・関係産別に対し、不当労働行為であるチェックオフ制度(給与から組合費を控除することができる)廃止を許さない支援要請を行うこととします。
  3. 条例適用となる市職に対して、憲法・労働基準法・地方公務員法違反をもって、直ちに新田孝議員をはじめとする提案議員を相手取り、団結権侵害の損害賠償請求の提訴を求めます。

市労連は、組織の総力を挙げて、不退転の決意を持って闘います。

以上

大阪市のチェックオフ廃止の条例改正に関する見解

2008年3月30日
近畿大学法科大学院教授
大阪市立大学名誉教授
西 谷  敏

 3月28日、大阪市議会が、チェックオフ(給与からの組合費の天引き)を廃止するために、「職員の給与に関する条例」の一部改正を可決したとの報道に接した。しかし、職員団体と当局が自主的な取り決めにもとづいて実施してきたチェックオフを廃止するための条例改正は、勤労者の団結権等を保障した憲法28条、結社の自由と団結権を保障し、国に対してその尊重を義務づけたILO87号条約に違反し、また地方公務員法(地公法)25条2項の趣旨に反するものである。

 チェックオフは、直接的には労働組合と使用者の取り決めにもとづいてなされる一種の便宜供与であるが、労働組合の運営にとってきわめて重要な意義を有し、団結権に基礎を置く制度である。日本では広く普及しており、厚生労働省の実施した平成18年労働協約等実態調査によれば、労働協約を締結している労働組合の93.5%がそれを実施している。

 チェックオフは団結権に基礎を置く制度であるから、労使協定ないし慣行にもとづいてチェックオフが行われているときに、使用者が合理的根拠なしにそれを一方的に廃止することが、団結権の侵害を意味し、不当労働行為となることは、確立した判例と労働委員会命令の立場である。国が法律によってチェックオフを禁止することも、憲法違反の評価を免れないであろう。民間の労使関係について確立しているこの原則は、当然に非現業職員の職員団体と当局の関係にもあてはまる。

 非現業職員についても、チェックオフは職員団体と当局の協定・合意によってなされる。職員団体は、労働協約の締結権限を否定されているが、当局との間で書面協定を締結することは保障されており(地公法55条9項)、この協定は、当局と職員団体が誠意と責任をもつて履行しなければならないとされている(同55条10項)。このことは、当然チェックオフ協定にもあてはまる。地公法25条2項は、給与からの一部控除のために条例の根拠が必要である旨規定しているが、そのことは、チェックオフが労使協定(文書化されないものを含む)にもとづくものであることと矛盾するものではなく、この場合の条例は、労使協定を前提として、それを確認する趣旨のものと解されるべきである。

 労働基準法(労基法)の諸規定は、原則として非現業職員にも適用されるが、一部の規定は適用除外とされており、そのなかに賃金に関する3つの原則(通貨払、直接払、全額払)を定めた24条1項も含まれている。それが適用除外とされるのは、通貨払原則について労働協約による例外が認められている(職員団体は労働協約を締結できない)ことによるとも考えられるが、それはともかくとして、この適用除外によって、全額払原則と労働者過半数代表との労使協定による例外を定めた部分まで適用されないこととなった。

 そこで、それに代わるものとして、地公法25条2項は、改めて給与に関する3つの原則を規定したうえで、法令または条例による例外だけを認めることにしたのである。このことから明らかなように、地公法25条2項が給与からの一部控除について条例の規定を求めているのは、労基法24条1項が労働者過半数代表との書面協定を要求するのと同じく、職員に給与が確実に支払われることを保障するためであって、それ以上のものではない。

 しかも、注意すべきは、チェックオフは他の控除とは異なり、労働者(職員)全体ではなく、組合員(職員団体構成員)にだけかかわる控除だということである。そのため、チェックオフについては、本来、労働組合と使用者の合意さえあればよく、労基法24条1項の要求する労働者過半数代表との書面協定も不要とする有力説も存在するのである。

 地公法25条2項が給与からの一部控除について条例の定めを要求しているのは、あくまで当局による根拠のない給与控除を防止するためであるから、職員団体がその構成員の総意をふまえて当局との間で行った協定にもとづいて行われているチェックオフについては、条例はせいぜいその協定の趣旨を確認するにとどまる。仮に、そうした条例が制定されない場合に、当局がチェックオフをなしえないとしても、一旦労使協定にもとづいてチェックオフ制度を認める条例が制定され、現にチェックオフが実施されている場合に、条例改正によって積極的にそれを否定することは、地公法25条2項の予定しないところというべきである。

 民間労使関係においては、使用者はチェックオフ協定を締結するかどうかの自由をもつにしても、すでに協定等にもとづいてそれを実施している場合に、協定破棄等によってチェックオフを廃止することは不当労働行為となり違法となるが、それと同じく、チェックオフを認める条例を制定するかどうかが議会の権限に属するとしても、一旦それを認める条例が制定され、チェックオフが実施されている場合に、条例によってそれを積極的に否定するのは、団結権侵害を意味をもつのである。

 現行法上、非現業の地方公務員について勤務条件条例主義がとられ、それとの関係で労働協約締結権が否定されるなど、いくつかの点で民間労働者と異なった扱いがされていることの当否については、公務員制度改革との関係で種々議論されているところであるが、そのことは別として、現行法も、非現業職員とその団体について、憲法28条にもとづいて団結権が保障されていることを当然の前提にしていることを忘れてはならない。そして、チェックオフが労働組合(職員団体)の団結権を保障するためにきわめて重要な制度であることを考えるならば、長年労使協定にもとづいて行われてきたチェックオフを条例改正によって廃止することは、地公法25条2項の予定しないところであるだけでなく、団結権侵害の意味をもち、憲法28条および、日本も批准しているILO87号条約に違反するというべきである。

以上