更新日:2009年5月18日

市職自治研集会開く

記念講演~地域から市政を変える(その3) 岩崎恭典さん
新しい住民組織を考える
講師の岩崎恭典さん

講師:岩崎恭典さん
【プロフィル】現、四日市大学総合政策学部教授・大阪市行 財政改革検討委員会委員1956年、京都府生ま れ早稲田大学大学院政治学研究科修了、財団法人地方行政シス テム研究所研究員、中央学院大学法学部助教授等を経て現職

 これから先の大阪に則しての話は、私が考えていることに過ぎません。行財政改革検討委員会の委員として何らかのコメントをするものではないということをあらかじめお断りしておきます。

 大阪市には日赤奉仕団を源とする地域振興会(以下、振興会と略)という活発な組織が網羅されています。今も区役所を通じて振興会にいろんな仕事をお願いしていると思います。しかし、多くの振興会は、やや「人切れ」を起こしているのではないかと思います。ないしは特定の方に兼職による負担が集中していると思います。

 この状況をどうするか。地域には何かをやりたいと思っている人達が実はたくさんいます。例えば、定年を迎えたお父さん達。1997年に千葉県我孫子市で、2000年に四日市市で「シニア男性調査」を行いました。ほぼ同様の結果で、驚いたことに、少しぐらいなら自己出資をしてでも何か公的な仕事をしてみたいと感じているお父さんが10%から15%います。これは重要です。そういう方が振興会のもとに結集すればいいのですが、ただ振興会はちょっと敷居の高い組織になっています。そこで振興会が窓口になって、そんなお父さんたちを組織化する。一方では行政側から住民にお願い出来るかも知れない仕事を提案にまとめて、それを各局から区を通して縦割りで提案するのではなくて、区が責任を持って提案する。そういうことが必要になってくると思います。

 そういった住民組織というのは、地域特性は24区で異なり、しかも各区の中でも特性が異なるわけですから、小学校区か中学校区の単位ということになります。ただし、これは振興会に新たな役割としてお願いすればいいという問題ではありません。振興会にはいろんな仕事をお願いしているけれども、本来、振興会自体は地域の親睦のための組織です。あるいは地域の仕事が少し金になると言いましたが、40年経っても金にならない仕事もあります。それが防犯であり防災です。防犯や防災は、行政責任で維持すべきセーフティネットであるとともに、伝統的に自治会としての振興会に担っていただいています。しかし例えば介護などその他の仕事を全部振興会に担わせるというのは余りにも酷です。

 だからこういう住民組織は、地域の振興会もNPOも企業も意欲のある個人も入って、5~10年後の地域社会がどうなるかをみんなで見つめて、予測される課題を解決するために市民は何をやり、行政は何をやればいいのか、市民と行政が一緒に何が出来るのかということを先ず検討する「場」となることが最初の役割だろうと思います。それを文書にしたものこそ「地域まちづくり計画」だと思います。そしてそれに基づいた仕事を各立場でやっていく。全部、振興会がやるのではなくて、仕事の割り振りをするのです。それにはちょっと時間がかかるかも知れないけれど、大阪独特の仕組みを作っていくことが大事なのではないか。それは急激に症状が改善するわけではなく漢方薬みたいだが、行政改革にとって特効薬の処方箋なのではないかと思っています。

「神は細部に宿る」とは

 最後に国に対する制度改善要求との関係についてお話します。

 大阪市は生活保護率が高いと聞きましたが、他都市と比較して高いからと言って切るというのは、ベッドのサイズに合わせて寝ている人のナマ足を切るような話です。本来、生活保護費ぐらい自治体で賄えるぐらいの税源を大阪市は持ってないとまずいのではないか。

 しかし、そういう税源移譲の主張をするためには、地域の自治体はこうなっているんだ、だから制度を変えろという話をしていかなければいけない。そんなことが、今求められる。だからこそ一番小さな地域で、その単位が小学校区なのか中学校区なのかさらにより小さな単位なのかまではまだ検討していませんが、そこで様々な取り組みを市民と職員が一緒にして、そして制度がおかしいのであれば変える要望をしようということであります。

 今全国的に有名になりましたが、青色回転灯というのがあります。防犯パトロールで青色の回転灯を民間の車の屋根の上乗せてパトロールする。そうすると空き巣、泥棒の数が顕著に減るというわけです。あれを始めたのは、四日市のある自治会でした。青色回転灯の効果をその自治会がどこかで聞きつけて、それで何も考えずに車に乗せて走ろうとしたら、緊急車両以外使ったらいけないと警察が待ったをかけたのです。そこで、効果があるかどうかの実証をさせてくれと、市に持ち込んで、特区申請しました。その結果、そこだけ規制を外すことが出来ました。やってみると確かに効果が確認され、青色回転灯は今、申請すればかなりのところで出来るようになりました。

 私がレジュメの最後のところで「神は細部に宿る」と書いたのは、そういうことです。小さなところから制度改善要求というものを積み上げていけば制度は絶対変わります。制度に合わせる地域では絶対いけません。けれどそのためには、制度改革要求の根拠となる組織は、出来るだけ多様な人が入っていなくてはいけない。そしてなおかつその人達が実際にやらなければいけない。そこから大阪市の、特に区制のあり方というのは見えてくると思っています。

 私も微力ながら、大阪スタイルを作っていくお手伝いが出来ればと考えております。ご清聴有難うございました。

【労働組合として-岩崎先生の講演を受けて】

 3回にわたり岩崎恭典先生の市職自治研集会記念講演録を掲載しました。改めてご多忙な中、多くの職員が参加するのなら、と講演を快諾してくださった先生のご好意にお礼申し上げます。

 大阪市職はこれまで、大阪市が深刻な財政危機にあり、財政再建を基調とした市政改革が必要であることは認識しつつも、關市長時代の「改革」は一律シーリング的な経費削減であり、負担を市民サービスや職員の賃金労働条件の切り下げのみに転嫁しているとの批判を表明してきました。そして市政改革においては政策の「選択と集中」の明確化が必要としてきました。しかし労働組合としてその「選択と集中」の具体内容を提言しえたわけではありませんでした。

 今回の岩崎先生のお話は、「狭い地域でなければ有効でない」仕事を市民に返すことで、行政の効率化を図ると共に、これら仕事の仕分け及び遂行のシステムを、地域振興会を中核としながらも新しい住民組織の構築によって市民が担うことで、地域コミュニティの再生・再構築をはかり、むしろそこから-「神の宿る細部」から-「この国のかたち」を変えていこうという提言でした。

 提言内容は私たちの仕事のあり方を大きく変えるものを含むだけに、労働組合としては今後の行財政改革検討委員会での議論の推移も注視し、慎重な対応が求められます。しかし、今までの改革議論になかった質を伴う議論が投げかけられたことは間違いありません。労働組合としても、各現場での議論を要請していきたいと考えています。

 最後に、当ホームページ掲載した講演録は紙幅の関係で大幅な要約を行わざるを得ませんでした。重ねて文責が大阪市職政策局にあることをお伝えし、ご理解をお願いする次第です。

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